Ceci et Cela

2024/01/11 19:40

繊細な虹彩、怪しく揺らめく血管


ガラス製義眼が初めて造られたのは16世紀 イタリア ヴェネツィア。
当時 金属製の義眼も造られていましたが、ヴェネティアのガラス義眼の製造工程は極秘事項で他国では製造されていませんでした。
しかし、まだまだ現代のような完成された義眼ではなく、付け心地も悪かったようです。

その後19世紀初頭にはフランスで鉛ガラスを使用したボアッソウノー式義眼が造られ、義眼はガラス製の時代になりました。
鉛ガラスは現代で言うクリスタル・ガラスですが脆くて重い為、1830年代に入りクリスマスのオーナメントやドール・アイを製造していたドイツ ラウシャ村でガラス職人 ルートヴィッヒ・ミューラー・ウリが新しいガラス素材により丈夫で軽いギガンの製造に成功をしました。
義眼は当時 シングル義眼(中空でない義眼)のみが造られていたようです。
その後、50年位経ちダブル義眼が開発されました。
この時造られた義眼は縁を丸く加工されていて、装着感が断然良くなりました。
その後、1940年代にアメリカで現代使用されている樹脂製の義眼が開発されるまで、義眼といえばラウシャ製と言われていました。
私も何百個の義眼を見てきましたが、ラウシャの義眼は虹彩の色入れ・澄んだ白目・本当も眼球かと見間違えるような血管など全てにおいて素晴らしい出来です。

義眼は蜻蛉玉を造るように吹きガラスにより造られています。
下画像は義眼の製造風景です。



義眼製造には段階があり初期の段階では虹彩が入っていません。
色ガラスで虹彩を入れていき、見えなくなり萎縮した目に合わせて成形してしていきます。
見えている方の目に合わせる必要がある為、職人の技術はもちろん感性も必要であったことでしょう。
たまに漫画では丸い義眼を外すシーンがありますが、戦争などで眼球を無くしたとしても丸い義眼は入れません。
そして赤い血管は赤い糸でゆらゆら感を出します。

下画像は義眼ができるまでの工程です。

店を始めて初めてのフランス ルアンの仕入れで義眼に出会って以来 義眼に魅せられ、私なりに義眼を追求してきました。
夢は義眼の魅力を伝える義眼博物館を創ることです。
それまでまだまだ旅は続きます。


義眼をオブジェとして購入する場合のポイント
1. 虹彩を決める
虹彩は義眼でとても重要な部分です。
▫︎ ブラウン系 - Brown 濃く黒く見える濃褐色が多く、薄い茶色も存在します。
▫︎ ブルー系 - Blue 初めて義眼を購入される方の多くがブルー系を購入されます。
濃くネイビーのようなブルーから淡い砂糖菓子のようなブルーまであります、
▫︎ ヘーゼル系 - Hazel ライトブラウンとダークグリーンの中間色で、光に翳すと瞳孔周りがライトグリーンやアンバーに白眼周辺がブルーに見えることもあります。
▫︎ アンバー系 - Amber イエローやゴールドのような色、小豆色などの混じった色目で、通称『 狼の眼 』と呼ばれています。
▫︎ グレー系 Gray 薄いグレーの虹彩で濃いブルーと言われることもある。
▫︎ グリーン系 Green ヘーゼルと分かりづらい色目で、グリーンにブラウンが入ったような虹彩が多い。
▫︎ 義眼ではあまり見ないがレット系やバイオレット系の虹彩も存在する。

2. ダブルかシングルか
義眼には2タイプあり、吹きガラスで製作した義眼をそのまま中空の状態にして成形したダブルタイプと、平板の状態のシングルタイプが存在します。
眼の萎縮状態によって厚みを変えるので2種類存在するわけです。
シングルタイプは光に翳すと直接光を通す為 虹彩の色がとても明るく見えます。

3. 血管の入り
白目部分に血管を入れた義眼が多いですが、血管は赤い糸を使用しています。
血管の分量も様々で多いと生々しく感じます。

4. 横から見たカタチ
義眼は上から見たカタチで決める人が多いですが、横から見ると山形が様々あり、オブジェとして置く場合は是非横から見た形状を気にしてみて下さい。

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